品質不具合の原因分析をデータで行う|4M変動と工程パラメータの突き合わせ
不具合の原因究明を経験に頼ると、再発防止が属人化します。4M(人・機械・材料・方法)の変動記録と工程パラメータを突き合わせる分析の手順、必要なデータの粒度、よくある誤りを解説します。
この記事の要点
- 不具合分析で最初に必要なのは、原因データではなく「いつ起きたか」の正確な時刻
- 4Mの変動記録(段取り替え、材料ロット変更、担当交代)がないと突き合わせができない
- 相関が見つかっても因果とは限らない。現場での検証手順まで含めて設計する
- 発生件数が少ない不具合は統計的に扱えない。この場合は条件の絞り込みが有効
品質不具合の原因究明が、ベテランの経験と勘に依存している工場は多くあります。経験による絞り込みは強力ですが、その人が異動すると再現できないという問題を抱えています。
本記事では、データによる原因分析を成立させるために必要な準備と、実務的な手順を解説します。
分析の前提は「時刻」
分析で最初に必要なのは、原因に関するデータではなく不具合がいつ起きたかの正確な記録です。
| 記録の粒度 | 突き合わせの可否 |
|---|---|
| 日付のみ | 困難(24時間のどこか分からない) |
| 時間単位 | 可能(多くの分析はこの粒度で足りる) |
| 分単位 | 詳細な工程条件との対応が可能 |
| ロット単位 | 可能(ロットと時刻の対応表があれば) |
日付のみの記録しかない工場は多く、この場合その日の全データが候補になってしまい、原因を絞り込めません。
設備投資を伴わずに今日から改善できる項目なので、まずここから着手してください。
4Mの変動記録
不具合は「いつもと違うこと」が起きたときに発生します。したがって、何が変わったかの記録が分析の中心になります。
| 区分 | 記録すべき変動 |
|---|---|
| 人(Man) | 担当者の交代、応援者の投入、シフト変更 |
| 機械(Machine) | 段取り替え、金型交換、保全作業、設定変更 |
| 材料(Material) | ロット切り替え、仕入先変更、保管期間 |
| 方法(Method) | 手順変更、条件変更、新製品の立ち上げ |
これらの変動時刻が記録されていれば、不具合の発生時刻と突き合わせるだけで候補が絞れます。
材料ロットの切り替え時刻は特に重要です。多くの不具合が材料起因であるにもかかわらず、切り替え時刻が記録されていない工場は珍しくありません。
分析の手順
1. 発生時刻の一覧を作る
対象期間の不具合を、発生時刻順に並べます。この時点で時間帯や曜日の偏りが見えることがあります。
2. 変動記録を重ねる
同じ時間軸に4Mの変動を重ね、不具合の直前・直後に何が起きていたかを確認します。
3. 工程パラメータを突き合わせる
温度、圧力、速度、電流値などの推移と重ね、不具合発生時に通常と異なる値だったかを確認します。
4. 共通条件を絞り込む
| 確認軸 | 例 |
|---|---|
| 材料ロット | 特定ロットに集中しているか |
| 時間帯 | 立ち上げ直後、夜勤帯 |
| 担当者 | 特定の作業者に偏りがあるか |
| 設備 | 特定の号機に集中しているか |
| 製品 | 特定の品番に集中しているか |
5. 現場で検証する
絞り込んだ条件を意図的に再現し、不具合が再現するかを確認します。ここまでやって初めて因果の確認になります。
件数が少ない不具合の扱い
年に数回しか起きない不具合は、統計的な分析に向きません。
| 件数 | 適した方法 |
|---|---|
| 数十件以上 | 統計的分析、要因の寄与度算出 |
| 5〜20件 | 条件の一覧化と共通点の抽出 |
| 数件 | 個別の詳細調査。データは補助 |
件数が少なくても、発生時の条件を漏れなく一覧化することには価値があります。5件すべてが同じ材料仕入先だった、という事実は統計的有意性がなくても調査の方向を決めます。
よくある誤り
| 誤り | 問題 |
|---|---|
| 相関を因果として扱う | 別の要因が背後にある可能性 |
| 良品側のデータを見ない | 「不具合時に高温だった」だけでは不十分。良品時も高温かもしれない |
| 対策後に検証しない | 効果があったのか、たまたま出なかったのかが不明 |
| 全要因を同時に変える | どれが効いたか分からなくなる |
2行目は頻出する誤りです。不具合時のデータだけを見ると、常に存在する条件を原因と誤認します。良品時のデータと比較して初めて差が意味を持ちます。
進め方
| 時期 | 取り組み | 到達点 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 不具合記録の時刻粒度の改善、4M変動記録の運用開始 | 分析の前提整備 |
| 2〜3か月目 | 既存データでの分析(過去分) | 傾向の把握 |
| 4〜6か月目 | 新しい記録での分析、現場検証 | 因果の確認 |
| 7か月目以降 | 監視項目の設定、異常検知への接続 | 予防への展開 |
まとめ
品質不具合のデータ分析は、時刻の粒度と4M変動の記録という前提が整って初めて成立します。この2つがない状態で分析ツールを導入しても、突き合わせる対象がありません。
相関が見つかったら現場で検証すること、良品側のデータと比較すること。この2点を守れば、経験に依存しない再発防止の仕組みが作れます。
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参考
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DXの推進」https://www.ipa.go.jp/digital/dx/index.html
- 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)https://www.nedo.go.jp/
よくある質問
- Q. 不具合分析にはどんなデータが必要ですか?
- 不具合の発生時刻(できれば分単位)、そのときの工程パラメータ、そして4Mの変動記録です。とくに4Mの変動(材料ロットの切り替え、段取り替え、担当者の交代、設備の調整)がいつ行われたかの記録がないと、パラメータの変化と不具合の対応づけができません。
- Q. 発生件数が少ない不具合はどう扱いますか?
- 統計的な分析は困難です。この場合は、発生時の条件を一覧化し、共通する条件を絞り込む方法が有効です。5件の不具合すべてが特定の材料ロット、特定の時間帯に集中しているといった傾向は、件数が少なくても示唆になります。
- Q. 相関が見つかったら対策してよいですか?
- 相関は仮説であり、因果の証明ではありません。たとえば「気温が高い日に不具合が多い」という相関は、気温そのものではなく、その日の稼働率や換気状態が原因かもしれません。現場で条件を変えて検証する手順まで含めて計画してください。
- Q. 分析の前に何を整備すべきですか?
- 時刻の精度です。不具合の記録が日付単位だと、その日の24時間のどこで起きたかが分からず、工程データとの突き合わせができません。今日から時刻を記録する運用に変えるだけで、1年後の分析の前提が変わります。
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Pactom 編集部
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