製造業

品質不具合の原因分析をデータで行う|4M変動と工程パラメータの突き合わせ

公開 3分で読めますPactom 編集部
作業台で製品の入った容器を扱う作業者

不具合の原因究明を経験に頼ると、再発防止が属人化します。4M(人・機械・材料・方法)の変動記録と工程パラメータを突き合わせる分析の手順、必要なデータの粒度、よくある誤りを解説します。

この記事の要点

  • 不具合分析で最初に必要なのは、原因データではなく「いつ起きたか」の正確な時刻
  • 4Mの変動記録(段取り替え、材料ロット変更、担当交代)がないと突き合わせができない
  • 相関が見つかっても因果とは限らない。現場での検証手順まで含めて設計する
  • 発生件数が少ない不具合は統計的に扱えない。この場合は条件の絞り込みが有効

品質不具合の原因究明が、ベテランの経験と勘に依存している工場は多くあります。経験による絞り込みは強力ですが、その人が異動すると再現できないという問題を抱えています。

本記事では、データによる原因分析を成立させるために必要な準備と、実務的な手順を解説します。

分析の前提は「時刻」

分析で最初に必要なのは、原因に関するデータではなく不具合がいつ起きたかの正確な記録です。

記録の粒度突き合わせの可否
日付のみ困難(24時間のどこか分からない)
時間単位可能(多くの分析はこの粒度で足りる)
分単位詳細な工程条件との対応が可能
ロット単位可能(ロットと時刻の対応表があれば)

日付のみの記録しかない工場は多く、この場合その日の全データが候補になってしまい、原因を絞り込めません

設備投資を伴わずに今日から改善できる項目なので、まずここから着手してください。

4Mの変動記録

不具合は「いつもと違うこと」が起きたときに発生します。したがって、何が変わったかの記録が分析の中心になります。

区分記録すべき変動
人(Man)担当者の交代、応援者の投入、シフト変更
機械(Machine)段取り替え、金型交換、保全作業、設定変更
材料(Material)ロット切り替え、仕入先変更、保管期間
方法(Method)手順変更、条件変更、新製品の立ち上げ

これらの変動時刻が記録されていれば、不具合の発生時刻と突き合わせるだけで候補が絞れます。

材料ロットの切り替え時刻は特に重要です。多くの不具合が材料起因であるにもかかわらず、切り替え時刻が記録されていない工場は珍しくありません。

分析の手順

1. 発生時刻の一覧を作る

対象期間の不具合を、発生時刻順に並べます。この時点で時間帯や曜日の偏りが見えることがあります。

2. 変動記録を重ねる

同じ時間軸に4Mの変動を重ね、不具合の直前・直後に何が起きていたかを確認します。

3. 工程パラメータを突き合わせる

温度、圧力、速度、電流値などの推移と重ね、不具合発生時に通常と異なる値だったかを確認します。

4. 共通条件を絞り込む

確認軸
材料ロット特定ロットに集中しているか
時間帯立ち上げ直後、夜勤帯
担当者特定の作業者に偏りがあるか
設備特定の号機に集中しているか
製品特定の品番に集中しているか

5. 現場で検証する

絞り込んだ条件を意図的に再現し、不具合が再現するかを確認します。ここまでやって初めて因果の確認になります。

件数が少ない不具合の扱い

年に数回しか起きない不具合は、統計的な分析に向きません。

件数適した方法
数十件以上統計的分析、要因の寄与度算出
5〜20件条件の一覧化と共通点の抽出
数件個別の詳細調査。データは補助

件数が少なくても、発生時の条件を漏れなく一覧化することには価値があります。5件すべてが同じ材料仕入先だった、という事実は統計的有意性がなくても調査の方向を決めます。

よくある誤り

誤り問題
相関を因果として扱う別の要因が背後にある可能性
良品側のデータを見ない「不具合時に高温だった」だけでは不十分。良品時も高温かもしれない
対策後に検証しない効果があったのか、たまたま出なかったのかが不明
全要因を同時に変えるどれが効いたか分からなくなる

2行目は頻出する誤りです。不具合時のデータだけを見ると、常に存在する条件を原因と誤認します。良品時のデータと比較して初めて差が意味を持ちます。

進め方

時期取り組み到達点
1か月目不具合記録の時刻粒度の改善、4M変動記録の運用開始分析の前提整備
2〜3か月目既存データでの分析(過去分)傾向の把握
4〜6か月目新しい記録での分析、現場検証因果の確認
7か月目以降監視項目の設定、異常検知への接続予防への展開

まとめ

品質不具合のデータ分析は、時刻の粒度と4M変動の記録という前提が整って初めて成立します。この2つがない状態で分析ツールを導入しても、突き合わせる対象がありません。

相関が見つかったら現場で検証すること、良品側のデータと比較すること。この2点を守れば、経験に依存しない再発防止の仕組みが作れます。

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参考

よくある質問

Q. 不具合分析にはどんなデータが必要ですか?
不具合の発生時刻(できれば分単位)、そのときの工程パラメータ、そして4Mの変動記録です。とくに4Mの変動(材料ロットの切り替え、段取り替え、担当者の交代、設備の調整)がいつ行われたかの記録がないと、パラメータの変化と不具合の対応づけができません。
Q. 発生件数が少ない不具合はどう扱いますか?
統計的な分析は困難です。この場合は、発生時の条件を一覧化し、共通する条件を絞り込む方法が有効です。5件の不具合すべてが特定の材料ロット、特定の時間帯に集中しているといった傾向は、件数が少なくても示唆になります。
Q. 相関が見つかったら対策してよいですか?
相関は仮説であり、因果の証明ではありません。たとえば「気温が高い日に不具合が多い」という相関は、気温そのものではなく、その日の稼働率や換気状態が原因かもしれません。現場で条件を変えて検証する手順まで含めて計画してください。
Q. 分析の前に何を整備すべきですか?
時刻の精度です。不具合の記録が日付単位だと、その日の24時間のどこで起きたかが分からず、工程データとの突き合わせができません。今日から時刻を記録する運用に変えるだけで、1年後の分析の前提が変わります。

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