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製造業の社内RAG|図面・仕様書・不具合履歴を検索可能にする実装の要点

公開 3分で読めますPactom 開発チーム
港湾に設置された大型サイロと荷役設備

製造業の文書は図面・仕様書・不具合履歴と種類が多く、扱い方が分かれます。どの文書から着手するか、型番や品番の表記ゆれへの対処、機密区分の設計、精度が出ないときの切り分けを解説します。

この記事の要点

  • 最初に着手すべきは不具合履歴。テキストが豊富で、探索時間の削減効果が最も大きい
  • 型番・品番の表記ゆれ(ハイフン有無、旧品番)が検索精度を大きく落とす
  • 図面は台帳(品番・改訂・用途)を検索対象にし、図面本体へは誘導する構成が現実的
  • 顧客支給の仕様書は機密区分が異なる。文書ごとの公開範囲を設計時に定義する

製造業には、図面・仕様書・作業手順書・不具合履歴・顧客からの支給資料と、種類の異なる文書が大量に蓄積されています。「過去に同じ不具合があったか」を調べるのに数時間かかる、という状況は珍しくありません。

社内RAGはこの探索時間を短縮する仕組みですが、文書の種類ごとに扱い方が異なります

文書別の適性

文書テキスト量構造化のしやすさ着手の優先度
不具合・クレーム履歴多い高い最優先
作業手順書多い高い高い
設備の取扱説明書多い高い
技術標準・社内規格多い高い高い
仕様書(顧客支給)多い中(機密区分の設計が必要)
図面少ない低い低い(台帳経由)
試験・測定データ数値中心高い別のシステムで扱う

不具合履歴から着手する理由は3つあります。テキストが豊富で検索に向く、探索の頻度が高い、そして原因と対策がセットで記録されているため回答として完結しやすいことです。

型番・品番の表記ゆれ

製造業の検索精度を最も下げる要因がこれです。

ゆれの種類
ハイフン・スペースABC-1234 / ABC1234 / ABC 1234
全角半角ABC-1234
旧品番と現行品番型番変更前後で同一製品
社内呼称と正式名称「例の治具」と正式な品番
顧客品番と自社品番同じ製品の別の識別子

対処は、検索前に正規化することです。

  1. ハイフン・スペース・全角半角を統一するルールを定義
  2. 旧品番と現行品番の対応表を用意
  3. 顧客品番と自社品番の対応表を用意
  4. 検索時に、入力された品番を正規化したうえで照合

この処理がないと、同じ製品の不具合履歴が検索で結びつきません。導入前に品番マスタの整備状況を確認してください。

図面の扱い方

図面はテキスト情報が乏しく、そのままでは検索対象になりません。

段階扱い
初期対象外
中期図面台帳(品番・図番・改訂・用途・関連製品)を検索対象に
後期台帳から図面へ誘導。表題欄のOCRを補助的に利用

「この製品の最新図面はどれか」という問いに答えるには、図面本体より台帳の整備が有効です。台帳がない場合、その作成自体に投資価値があります。

機密区分の設計

製造業特有の論点が、顧客支給資料の扱いです。

区分検索対象の扱い
社内公開技術標準、作業手順書全員
部門限定原価情報、歩留まりデータ所属部門
案件・顧客限定顧客支給の仕様書、図面担当者のみ
対象外秘密保持契約で共有が制限される資料検索対象に入れない

契約上の制約を確認せずに全文書を対象にすると、契約違反のリスクがあります。文書ごとに機密区分を持たせる設計を、構築の最初に組み込んでください。

評価質問の作り方

導入前に、実務で実際に発生する質問を30〜50件集めます。

質問の型
過去事例の検索「◯◯という症状の不具合は過去にあったか」
手順の確認「△△の段取り替え手順は」
仕様の確認「この製品の公差は」
対応の確認「このアラームが出たときの対応は」
対象外「他社の製品仕様は」

現場の担当者に「今週、何を調べたか」を聞くと、実態に即した質問が集まります。想定で作った質問セットは評価としての価値が低くなります

精度が出ないときの切り分け

症状原因対処
該当文書が検索結果に出ない検索側型番の正規化、分割単位、同義語
文書は出るが回答が的外れ生成側指示文、引用範囲
古い情報を回答する文書側版管理、旧版の除外
権限外の情報が出る設計機密区分の適用

進め方

時期取り組み到達点
1か月目機密区分の設計、品番の正規化ルール前提の整備
2か月目不具合履歴の整理、評価質問の収集対象文書の確定
3か月目構築と評価精度の実測
4か月目現場での試験運用業務への接続
5か月目以降手順書・技術標準へ拡大、図面台帳の整備適用範囲の拡張

まとめ

製造業の社内RAGは、不具合履歴から着手し、品番の表記ゆれを正規化することが成立の条件です。図面は台帳経由で扱い、本体は後の段階に回します。

そして顧客支給資料の機密区分を設計の最初に組み込むこと。後付けでは対象文書を広げられなくなります。

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参考

よくある質問

Q. どの文書から検索対象にすべきですか?
不具合・クレームの履歴からです。テキストが豊富で構造化しやすく、「この症状は過去にあったか」という探索は現場で頻繁に発生します。図面は初期の対象には向きません。まずテキスト文書で仕組みを立ち上げ、その後に図面台帳へ広げる順序が現実的です。
Q. 型番の表記ゆれにはどう対処しますか?
正規化ルールを先に決めます。ハイフンやスペースの有無、全角半角、旧品番と現行品番の対応表を用意し、検索時に正規化してから照合する構成にします。この対処をしないと、同じ製品の情報が検索で結びつきません。
Q. 顧客から支給された仕様書も対象にできますか?
契約上の制約を確認してください。秘密保持契約の対象となる文書は、公開範囲を限定するか、対象から外す判断が必要です。文書ごとに機密区分を持たせ、利用者の権限に応じて検索範囲を絞る設計にしておくと、後から対象を追加しやすくなります。
Q. 精度が出ないときは何を見直しますか?
検索段階と回答段階を切り分けてください。正しい文書が検索結果に出ていない場合は、文書の分割単位や型番の正規化を見直します。文書は出ているのに回答が不正確な場合は、回答の指示文と引用の方法を調整します。

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Pactom 開発チーム

株式会社Pactomは、製造業・建設業・小売/物流を中心に、AI導入の課題整理からユースケース設計、実装、運用定着までを一貫して支援しています。

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