建設業

建設業の社内RAG構築|施工標準・過去図面を検索可能にする手順

公開 3分で読めますPactom 開発チーム
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社内文書を検索できるようにするRAGは、文書の整理で成否が決まります。対象文書の選び方、版管理とアクセス権の設計、図面やスキャンPDFの扱い、精度が出ないときの切り分け方を解説します。

この記事の要点

  • RAGの精度はモデルではなく「対象文書の質」で決まる。旧版が混ざると誤答が構造的に発生する
  • 図面はテキストが取れないため、図面そのものより関連する仕様書・質疑応答から着手する
  • 精度が出ないときは「検索で拾えていない」のか「拾えたが回答が悪い」のかを必ず切り分ける
  • アクセス権を後付けすると作り直しになる。誰が何を見てよいかを設計の最初に決める

社内文書を検索して回答するRAG(検索拡張生成)は、建設業と相性のよい仕組みです。施工標準、仕様書、過去の質疑応答といった参照する文書が大量にあり、必要な情報を探す時間が実際にかかっているためです。

一方で、期待した精度が出ずに止まるケースも多く見られます。原因のほとんどは文書側にあります。

精度を決めるのはモデルではなく文書

文書の状態起きること
旧版と最新版が混在旧版の仕様を回答する(構造的に発生)
スキャンPDFで文字が取れない検索対象にならず「該当なし」になる
1文書が数百ページ関係のない箇所が引っかかる
社外秘が混在権限のない人に内容が表示される
同じ内容が複数箇所に矛盾した回答が生成される

1行目が最も深刻です。旧版が検索対象に入っていると、モデルをいくら変えても誤答は消えません。設計の最初に、対象を最新版のみに限定する仕組みを作ってください。

対象文書の選び方

着手時は、次の条件を満たす文書に絞ります。

条件理由
テキストが取れる検索の前提
版が明確誤答の原因を排除
参照頻度が高い効果が出やすい
公開範囲が単純権限設計を簡素にできる

建設業でこの条件を満たしやすいのは次の文書です。

  1. 社内の施工標準・作業手順書
  2. 過去案件の質疑応答集
  3. 安全衛生関連の規程
  4. 建材・機材のメーカー仕様書
  5. 社内の各種申請手順

逆に、図面・写真・手書きメモは初期の対象から外すほうが早く成果が出ます。

図面をどう扱うか

図面は情報の中心ですが、テキストとしては扱いにくい対象です。現実的な進め方は次のとおりです。

段階扱い方
初期図面は対象外。関連する仕様書・質疑を検索対象に
中期図面台帳(図面番号・工種・部位・改訂履歴)を検索対象に
後期台帳から該当図面へ誘導。図面内のテキストは必要に応じてOCR

図面台帳が整備されていない場合、まず台帳を作ること自体が価値のある投資になります。「あの納まりの図面はどこか」という探索時間は、多くの現場で無視できない量になっています。

アクセス権は設計の最初に決める

分類検索対象の扱い
全社公開施工標準、安全規程全員が検索可能
部門限定部門の手順書、単価情報所属部門のみ
案件限定発注者との質疑、契約関連案件関係者のみ
対象外人事情報、個人情報検索対象に入れない

この分類を後回しにすると、運用開始後に権限を追加する段階で仕組みを作り直すことになります。文書を集める前に分類の枠を決めてください。

精度が出ないときの切り分け

精度が期待に届かないとき、原因は2箇所のどちらかです。

症状原因の所在対処
正しい文書が検索結果に出ていない検索側文書の分割単位、検索設定、同義語辞書
正しい文書は出ているが回答が不正確生成側回答の指示文、引用の方法

この切り分けをせずにモデルを変更しても改善しません。検証手順は単純で、質問に対して「本来参照すべき文書」を人が特定し、それが検索結果の上位に来ているかを確認するだけです。

建設業で検索側の問題として多いのは、用語の揺れです。「配筋」「鉄筋組立」「鉄筋工事」が同じ対象を指す場合、同義語として扱う設定が必要になります。

評価の作り方

導入前に、評価用の質問セットを30〜50件用意します。

質問の種類割合
事実確認「◯◯の許容値は」40%
手順「△△の申請手順は」30%
判断の根拠「この条件では何を確認すべきか」20%
対象外「今日の天気は」10%

最後の「対象外」を含めることが重要です。答えるべきでない質問に答えてしまわないかを確認できます。

進め方

時期取り組み到達点
1か月目文書の分類、アクセス権の設計対象範囲の確定
2か月目版の整理、テキスト化の可否確認検索対象の準備完了
3か月目評価用質問の作成、初期構築精度の実測
4か月目切り分けと改善、業務動線への配置試験運用
5か月目以降対象文書の拡大、図面台帳の整備適用範囲の拡張

まとめ

社内RAGの精度は、対象文書の質でほぼ決まります。旧版の排除、テキストが取れる文書への限定、アクセス権の事前設計。この3点を設計段階で押さえておけば、構築後の手戻りを避けられます。

図面は初期の対象から外し、まず仕様書と質疑応答から着手してください。図面台帳の整備は、その次の段階で効いてきます。

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参考

よくある質問

Q. RAGとは何ですか?
社内の文書を検索し、その内容を根拠として回答を生成する仕組みです。モデル自体に自社の情報を覚えさせるのではなく、質問のたびに関連文書を探して回答に使うため、文書を更新すれば回答も追従します。社内情報を扱う用途では、この方式が現実的な選択肢になります。
Q. 図面を検索対象にできますか?
図面はテキスト情報が乏しいため、そのままでは効果的に検索できません。図面番号・工種・部位といった属性情報が台帳として整理されていれば、その台帳を検索対象にして図面へ誘導する構成が現実的です。まずは仕様書や質疑応答など、テキストが豊富な文書から着手してください。
Q. 精度が出ないときは何を確認しますか?
「検索で正しい文書を拾えているか」と「拾えた文書から適切に回答できているか」を分けて確認します。前者が原因なら文書の分割方法や検索の設定を、後者が原因なら回答の指示文を見直します。この切り分けをせずにモデルを変えても改善しません。
Q. 情報漏えいのリスクはどう管理しますか?
アクセス権の設計を最初に行います。全社員が見てよい文書、部門限定の文書、案件関係者限定の文書を分類し、検索対象を利用者の権限に応じて絞り込む構成にします。これを後付けしようとすると作り直しになるため、設計段階で決めてください。

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Pactom 開発チーム

株式会社Pactomは、製造業・建設業・小売/物流を中心に、AI導入の課題整理からユースケース設計、実装、運用定着までを一貫して支援しています。

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