協力会社とのデータ連携をどう進めるか|発注・出来高・請求の電子化
元請だけが効率化しても現場全体の負荷は減りません。協力会社を巻き込むデータ連携で、どの帳票から始めるか、規模差をどう吸収するか、電子化が定着する条件を実務ベースで解説します。
この記事の要点
- 元請の効率化が協力会社への負担移転になっていないかを、帳票単位で確認する
- 着手すべきは「協力会社側にも手間が減る帳票」。請求・出来高がこれに当たる
- 協力会社の規模差は大きい。PCを持たない会社を前提にした入力手段が必要
- 電子化のルールは元請が単独で決めず、主要な協力会社と一緒に決めると定着が速い
建設業のDXは、元請の社内で完結しません。現場の情報の多くは協力会社が持っているためです。元請だけが効率化しても、その分の作業が協力会社に移っているだけでは、現場全体の労働時間は減りません。
本記事では、協力会社を巻き込んだデータ連携の進め方を解説します。
負担が移転していないかを帳票単位で確認する
まず、現在進めている(あるいは検討中の)施策を一覧にし、誰の作業が増減するかを確認します。
| 施策 | 元請 | 協力会社 | 全体 |
|---|---|---|---|
| 請求書の電子化 | 減 | 減 | 減 |
| 出来高報告の電子化 | 減 | 変化なし〜減 | 減 |
| 日報のアプリ入力 | 減 | 増 | 要確認 |
| 写真の現場アップロード | 大きく減 | 増 | 要確認 |
| 安全書類の電子提出 | 減 | 減(再利用できる場合) | 減 |
上2つと最下行が、双方に効く施策です。これらから着手すると協力を得やすくなります。
3〜4行目のように協力会社側の作業が増える施策は、入力の手間を最小化する設計(選択式、写真からの自動取得、既存データの流用)とセットにしないと定着しません。
規模差を前提にした入力手段
協力会社の規模は幅があります。同じ手段を全社に求めると、下限の会社で止まります。
| 会社の規模 | 想定される環境 | 適した入力手段 |
|---|---|---|
| 一人親方 | スマートフォンのみ | ブラウザ、または写真送信 |
| 数名〜10名 | スマートフォン+共用PC | ブラウザ、簡易フォーム |
| 数十名 | PC、自社システムあり | CSV連携、API |
最も小規模な会社に合わせた手段を必ず用意することが要点です。「アプリのインストールが必要」「専用IDでのログインが必要」という条件が増えるほど、参加率は下がります。
写真をチャットで送れば済む、という程度の手軽さを一つの基準にしてください。
請求・出来高から始める理由
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 協力会社の動機 | 紙の作成・郵送・押印がなくなる。入金確認も早い |
| 元請の効果 | 原価の把握が1〜2か月前倒しになる |
| 頻度 | 月次で必ず発生するため定着しやすい |
| 例外の少なさ | 様式が比較的統一しやすい |
原価把握の前倒しは、実行予算と実績の乖離を早期に掴むうえで直接的に効きます。請求書の到着を待っていると2か月前の状況を見て判断することになります。
ルールは一緒に決める
電子化の運用ルールを元請が単独で決めて通知すると、現場の実態と合わない部分が必ず出ます。
主要な協力会社数社と一緒に決めるべき項目です。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 締め日と提出期限 | 現行の商習慣とのずれ |
| 入力する単位 | 工区単位か、日単位か |
| 添付する証跡 | 写真の要否、枚数 |
| 差し戻しの手順 | 誰が、どのタイミングで |
| 紙の廃止時期 | 二重運用をいつ終えるか |
| 例外時の手順 | 通信できない、様式が特殊な場合 |
最後の2項目が定着を左右します。紙の廃止時期を決めない電子化は、二重運用のまま形骸化します。
定着しないときの確認項目
| 症状 | 疑うべき原因 |
|---|---|
| 提出率が上がらない | 入力の手間、または操作の分かりにくさ |
| 一部の会社だけ紙のまま | その会社の環境(PC・通信)に合っていない |
| 元請担当者が代理入力している | 協力会社側の負担が過大 |
| 入力内容の誤りが多い | 項目の定義が曖昧、選択肢が不足 |
| 一度使って戻った | 差し戻しや修正の手順が煩雑 |
3行目は特に見落とされます。元請の担当者が代理入力している状態は、電子化が失敗している状態です。数字上は電子化率が上がるため、報告では見えません。
進め方
| 時期 | 取り組み | 到達点 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 帳票別の負担増減の整理、対象の選定 | 着手対象の合意 |
| 2か月目 | 主要協力会社とのルール策定 | 運用ルールの確定 |
| 3〜4か月目 | 1現場での試行(紙と併用) | 課題の洗い出し |
| 5〜6か月目 | 紙の廃止、対象現場の拡大 | 二重運用の解消 |
| 7か月目以降 | 出来高・原価データの活用 | 原価把握の前倒し |
まとめ
協力会社とのデータ連携は、双方の手間が減る帳票(請求・出来高)から始めることが成功条件です。元請の効率化が協力会社への負担移転になっていないかを、帳票単位で必ず確認してください。
そして、最も小規模な会社でも使える入力手段を用意すること、紙の廃止時期を明示すること。この2点がないと、電子化は二重運用のまま止まります。
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参考
- 国土交通省「i-Construction」https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DXの推進」https://www.ipa.go.jp/digital/dx/index.html
よくある質問
- Q. どの帳票から電子化すべきですか?
- 請求と出来高です。協力会社側にとっても、紙の作成・郵送・押印の手間が減るため協力を得やすく、元請側も原価把握が早まります。逆に、元請の管理目的が強い帳票(詳細な作業報告など)から始めると、協力会社には負担増としか映りません。
- Q. 協力会社にシステム導入を求めても大丈夫ですか?
- 規模によります。一人親方や数名規模の会社にPC操作を前提としたシステムを求めると、電子化が進まないか、元請の担当者が代理入力することになります。スマートフォンのブラウザだけで完結する入力手段や、写真送信での代替を用意してください。
- Q. 費用は誰が負担すべきですか?
- 元請が負担するのが一般的です。協力会社に費用と手間の両方を求めると導入が進みません。ただし、協力会社側の業務時間が実際に減る設計であれば、費用負担の議論より先に「時間が減る」ことを示すほうが合意を得やすくなります。
- Q. 電子化が定着しない場合、何を疑うべきですか?
- 入力の手間と、紙との二重運用です。電子化したのに紙も提出させている状態では、協力会社の作業は純増します。移行日を決めて紙を廃止すること、そして例外時の手順(通信できない、様式が特殊)を用意することが定着の条件です。
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Pactom 編集部
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