建設業

協力会社とのデータ連携をどう進めるか|発注・出来高・請求の電子化

公開 3分で読めますPactom 編集部
現場に停まる作業用の軽トラック2台

元請だけが効率化しても現場全体の負荷は減りません。協力会社を巻き込むデータ連携で、どの帳票から始めるか、規模差をどう吸収するか、電子化が定着する条件を実務ベースで解説します。

この記事の要点

  • 元請の効率化が協力会社への負担移転になっていないかを、帳票単位で確認する
  • 着手すべきは「協力会社側にも手間が減る帳票」。請求・出来高がこれに当たる
  • 協力会社の規模差は大きい。PCを持たない会社を前提にした入力手段が必要
  • 電子化のルールは元請が単独で決めず、主要な協力会社と一緒に決めると定着が速い

建設業のDXは、元請の社内で完結しません。現場の情報の多くは協力会社が持っているためです。元請だけが効率化しても、その分の作業が協力会社に移っているだけでは、現場全体の労働時間は減りません。

本記事では、協力会社を巻き込んだデータ連携の進め方を解説します。

負担が移転していないかを帳票単位で確認する

まず、現在進めている(あるいは検討中の)施策を一覧にし、誰の作業が増減するかを確認します。

施策元請協力会社全体
請求書の電子化
出来高報告の電子化変化なし〜減
日報のアプリ入力要確認
写真の現場アップロード大きく減要確認
安全書類の電子提出減(再利用できる場合)

上2つと最下行が、双方に効く施策です。これらから着手すると協力を得やすくなります。

3〜4行目のように協力会社側の作業が増える施策は、入力の手間を最小化する設計(選択式、写真からの自動取得、既存データの流用)とセットにしないと定着しません。

規模差を前提にした入力手段

協力会社の規模は幅があります。同じ手段を全社に求めると、下限の会社で止まります。

会社の規模想定される環境適した入力手段
一人親方スマートフォンのみブラウザ、または写真送信
数名〜10名スマートフォン+共用PCブラウザ、簡易フォーム
数十名PC、自社システムありCSV連携、API

最も小規模な会社に合わせた手段を必ず用意することが要点です。「アプリのインストールが必要」「専用IDでのログインが必要」という条件が増えるほど、参加率は下がります。

写真をチャットで送れば済む、という程度の手軽さを一つの基準にしてください。

請求・出来高から始める理由

観点内容
協力会社の動機紙の作成・郵送・押印がなくなる。入金確認も早い
元請の効果原価の把握が1〜2か月前倒しになる
頻度月次で必ず発生するため定着しやすい
例外の少なさ様式が比較的統一しやすい

原価把握の前倒しは、実行予算と実績の乖離を早期に掴むうえで直接的に効きます。請求書の到着を待っていると2か月前の状況を見て判断することになります。

ルールは一緒に決める

電子化の運用ルールを元請が単独で決めて通知すると、現場の実態と合わない部分が必ず出ます。

主要な協力会社数社と一緒に決めるべき項目です。

項目決めること
締め日と提出期限現行の商習慣とのずれ
入力する単位工区単位か、日単位か
添付する証跡写真の要否、枚数
差し戻しの手順誰が、どのタイミングで
紙の廃止時期二重運用をいつ終えるか
例外時の手順通信できない、様式が特殊な場合

最後の2項目が定着を左右します。紙の廃止時期を決めない電子化は、二重運用のまま形骸化します。

定着しないときの確認項目

症状疑うべき原因
提出率が上がらない入力の手間、または操作の分かりにくさ
一部の会社だけ紙のままその会社の環境(PC・通信)に合っていない
元請担当者が代理入力している協力会社側の負担が過大
入力内容の誤りが多い項目の定義が曖昧、選択肢が不足
一度使って戻った差し戻しや修正の手順が煩雑

3行目は特に見落とされます。元請の担当者が代理入力している状態は、電子化が失敗している状態です。数字上は電子化率が上がるため、報告では見えません。

進め方

時期取り組み到達点
1か月目帳票別の負担増減の整理、対象の選定着手対象の合意
2か月目主要協力会社とのルール策定運用ルールの確定
3〜4か月目1現場での試行(紙と併用)課題の洗い出し
5〜6か月目紙の廃止、対象現場の拡大二重運用の解消
7か月目以降出来高・原価データの活用原価把握の前倒し

まとめ

協力会社とのデータ連携は、双方の手間が減る帳票(請求・出来高)から始めることが成功条件です。元請の効率化が協力会社への負担移転になっていないかを、帳票単位で必ず確認してください。

そして、最も小規模な会社でも使える入力手段を用意すること、紙の廃止時期を明示すること。この2点がないと、電子化は二重運用のまま止まります。

関連記事

参考

よくある質問

Q. どの帳票から電子化すべきですか?
請求と出来高です。協力会社側にとっても、紙の作成・郵送・押印の手間が減るため協力を得やすく、元請側も原価把握が早まります。逆に、元請の管理目的が強い帳票(詳細な作業報告など)から始めると、協力会社には負担増としか映りません。
Q. 協力会社にシステム導入を求めても大丈夫ですか?
規模によります。一人親方や数名規模の会社にPC操作を前提としたシステムを求めると、電子化が進まないか、元請の担当者が代理入力することになります。スマートフォンのブラウザだけで完結する入力手段や、写真送信での代替を用意してください。
Q. 費用は誰が負担すべきですか?
元請が負担するのが一般的です。協力会社に費用と手間の両方を求めると導入が進みません。ただし、協力会社側の業務時間が実際に減る設計であれば、費用負担の議論より先に「時間が減る」ことを示すほうが合意を得やすくなります。
Q. 電子化が定着しない場合、何を疑うべきですか?
入力の手間と、紙との二重運用です。電子化したのに紙も提出させている状態では、協力会社の作業は純増します。移行日を決めて紙を廃止すること、そして例外時の手順(通信できない、様式が特殊)を用意することが定着の条件です。

ABOUT THE AUTHOR

Pactom 編集部

株式会社Pactomは、製造業・建設業・小売/物流を中心に、AI導入の課題整理からユースケース設計、実装、運用定着までを一貫して支援しています。

導入について相談する

関連記事