サプライチェーンのリスクを可視化する|調達データから何が分かるか
供給途絶のリスクは、発生してから調べるのでは遅すぎます。既存の調達データから単一供給の部品、リードタイムの変動、仕入先の集中を洗い出す方法と、対策の優先順位の付け方を解説します。
この記事の要点
- まず調べるべきは「単一の仕入先しかない部品」。これが供給途絶時の最大の弱点になる
- リードタイムは平均ではなく変動幅(ばらつき)を見る。平均が短くても不安定なら在庫が必要
- 二次サプライヤーまで遡ると、複数社購買でも同じ原材料に集中していることがある
- 全部品を対象にせず、停止時の影響が大きい部品に絞ると数週間で実用的な整理ができる
供給途絶が起きてから代替先を探すのでは、生産停止を避けられません。一方、全部品のサプライチェーンを常時監視する仕組みは、多くの企業にとって過大な投資になります。
現実的なのは、既存の調達データから弱点を洗い出し、影響の大きい部分に絞って対策する進め方です。
既存データで分かること
| 分析 | 必要なデータ | 分かること |
|---|---|---|
| 仕入先の集中度 | 発注実績(品目・仕入先) | 単一供給の部品 |
| リードタイムの実績 | 発注日・入荷日 | 設定値と実態の乖離 |
| リードタイムの変動 | 同上(複数回分) | ばらつきと最大値 |
| 納期遵守率 | 希望納期・実績納期 | 仕入先ごとの信頼度 |
| 金額の集中 | 発注金額 | 依存度の高い取引先 |
| 品目の代替可能性 | 品目マスタ、承認図 | 切り替えの容易さ |
新しいシステムを導入する前に、購買データの集計で何が分かるかを確認してください。多くの場合、表計算ソフトでの集計から始められます。
単一供給部品の洗い出し
最も優先度が高い分析です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 直近1〜2年の発注実績を品目別に集計 |
| 2 | 仕入先が1社のみの品目を抽出 |
| 3 | 各品目が使われる製品と売上規模を紐づけ |
| 4 | 代替品の有無、切り替えに要する期間を確認 |
| 5 | 売上影響 × 切り替え難易度で優先順位を決定 |
3番目の紐づけが重要です。単一供給の品目は多数存在しますが、その大半は影響が小さいため、すべてに対策する必要はありません。
| 売上影響 | 切り替え難易度 | 対応 |
|---|---|---|
| 大 | 高い(承認図品、専用設計) | 在庫の積み増し、代替先の事前開発 |
| 大 | 低い(汎用品) | 代替先の登録のみ |
| 小 | 高い | 在庫の積み増し(少量) |
| 小 | 低い | 対応不要 |
リードタイムは変動幅で見る
| 品目 | 平均 | 最小 | 最大 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| A | 7日 | 6日 | 8日 | 安定。平均で設計可能 |
| B | 7日 | 5日 | 20日 | 不安定。最大値を考慮した在庫が必要 |
| C | 20日 | 19日 | 21日 | 長いが安定。計画発注で対応可能 |
BとCでは、平均が同じでも必要な安全在庫がまったく違います。リードタイムを平均だけで管理していると、Bのような品目で欠品が繰り返されます。
変動の原因を仕入先と共有し、改善を求めるか、在庫で吸収するかを品目ごとに判断してください。
二次サプライヤーの確認
複数社購買でもリスクが残るケースがあります。
| 見かけ | 実態 |
|---|---|
| 2社から購買 | どちらも同じ原材料メーカーから調達 |
| 3社から購買 | 全社が同一地域に工場を持つ |
| 国内・海外で分散 | 海外拠点が同一港湾に依存 |
全部品でここまで遡るのは現実的ではありません。単一供給の分析で抽出された重要部品に限定して、仕入先に二次サプライヤーの情報を確認します。
対策の選択肢
| 対策 | コスト | 効果 | 適した状況 |
|---|---|---|---|
| 在庫の積み増し | 在庫金額の増加 | 即効性がある | 短期の途絶に対応 |
| 代替先の事前開発 | 開発工数、承認手続き | 中長期で効く | 承認図品、専用品 |
| 設計の標準化 | 設計変更の工数 | 根本対策 | 汎用品への置き換えが可能な場合 |
| 仕入先との情報共有 | 調整コスト | 予兆の早期把握 | 主要取引先 |
| 内製化 | 設備投資 | 依存の解消 | 戦略的に重要な部品 |
多くの場合、在庫の積み増しと代替先の事前開発の組み合わせが現実的な解になります。
定常的な監視項目
一度整理したら、次の項目を定期的に確認する運用にします。
| 項目 | 頻度 | 閾値の例 |
|---|---|---|
| リードタイムの悪化 | 月次 | 直近3か月平均が過去1年平均の1.3倍 |
| 納期遵守率の低下 | 月次 | 90%を下回る仕入先 |
| 新規の単一供給品目 | 四半期 | 新規採用品で1社購買のもの |
| 金額集中度の変化 | 半期 | 特定仕入先の比率が上昇 |
新規採用品が単一供給になっていないかの確認は見落とされやすい項目です。設計段階で複数調達を前提にできれば、後からの対策より低コストで済みます。
進め方
| 時期 | 取り組み | 到達点 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 発注・入荷データの集計、単一供給品目の抽出 | 弱点の把握 |
| 2か月目 | 売上影響との紐づけ、優先順位付け | 対策対象の確定 |
| 3〜4か月目 | 重要部品の二次サプライヤー確認 | 実質的な集中の把握 |
| 5〜6か月目 | 対策の実行(在庫、代替先開発) | リスクの低減 |
| 7か月目以降 | 監視項目の定常運用 | 継続的な把握 |
まとめ
サプライチェーンのリスク可視化は、既存の購買データの集計から始められます。新しいシステムより先に、単一供給品目の抽出とリードタイムの変動分析を行ってください。
対策は全品目に広げず、売上影響と切り替え難易度で優先順位を付けること。そして新規採用品が単一供給にならないよう、設計段階で確認する運用を組み込むことが、長期的には最も効きます。
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参考
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DXの推進」https://www.ipa.go.jp/digital/dx/index.html
- 国土交通省「物流政策」https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/index.html
よくある質問
- Q. サプライチェーンの可視化には何のデータが必要ですか?
- 発注データ(品目・仕入先・数量・発注日)と入荷実績(入荷日・数量)があれば着手できます。これだけでリードタイムの実績と変動、仕入先ごとの依存度が算出できます。新しいシステムを導入する前に、既存の購買データで何が分かるかを確認してください。
- Q. 単一供給の部品はどう洗い出しますか?
- 直近1〜2年の発注実績を品目別に集計し、仕入先が1社のみの品目を抽出します。そのうえで、その部品が使われている製品の売上規模と、代替品の有無を確認します。件数が多い場合は、売上影響の大きい順に対応を検討してください。
- Q. リードタイムはどう管理すべきですか?
- 平均値だけでなく、ばらつきと最大値を見てください。平均7日でも、月によって5日から20日まで変動する品目は、平均で在庫を設計すると欠品します。実績の分布を確認し、変動の大きい品目には別の安全在庫の考え方を適用します。
- Q. 二次サプライヤーまで調べる必要はありますか?
- 重要部品については必要です。複数社から購買していても、その各社が同じ原材料メーカーや同じ地域の工場に依存していれば、実質的には単一供給と変わりません。全部品では現実的でないため、停止時の影響が大きい部品に絞って確認します。
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Pactom 編集部
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