建設現場のIoT・計測自動化|何を測ると何が判断できるようになるか
現場にセンサーを置く前に決めるべきは「何を判断したいか」です。計測対象別に得られる判断、通信・電源の制約、コンクリート養生や変位計測など建設特有の使いどころを整理します。
この記事の要点
- 「測れるから測る」と使われないデータが増える。判断とセットで計測対象を決める
- 現場の制約は通信と電源。有線が引けない場所での選択肢を先に確認する
- コンクリートの温度・強度推定は、脱型時期の判断に直結し効果が明確
- 短期の現場では設置・撤去の手間が効果を上回ることがある。工期で適用を判断する
現場にセンサーを設置する取り組みは広がっていますが、「取得したデータが使われていない」という状態も同じくらい多く見られます。
原因はほぼ一つで、何を判断したいかを決める前に計測を始めていることです。本記事では、計測対象と判断を対応づけて整理します。
計測対象と、そこから可能になる判断
| 計測対象 | 得られる判断 | 効果の明確さ |
|---|---|---|
| コンクリート温度 | 脱型時期、養生方法の要否 | 高い |
| 変位(土留め、法面、構造物) | 危険の予兆、施工方法の変更 | 高い |
| 重機・資機材の位置 | 稼働率、探索時間の削減 | 中 |
| 作業員の位置 | 立入管理、安全確保 | 中 |
| 騒音・振動 | 近隣対応の記録 | 中 |
| 気象(風速、雨量) | 作業中止の判断 | 中〜高 |
| 電力使用量 | 仮設電源の適正化 | 低〜中 |
判断が明確な上2つから着手するのが定石です。とくにコンクリート温度は、脱型時期という日程の判断に直結し、効果が工程として現れます。
コンクリート養生の計測
打設したコンクリートの温度履歴から強度発現を推定し、脱型可能な時期を判断する用途です。
| 従来 | 計測を導入した場合 |
|---|---|
| 現場養生した供試体を試験室で圧縮試験 | 温度履歴から推定し、試験は確認用 |
| 結果が出るまで待つ | 現時点の推定強度が随時分かる |
| 安全側に日数を確保 | 条件が良ければ前倒しできる |
冬季の施工や、工期が厳しい現場で効果が出やすい用途です。日程が1日前倒しできることの価値は、型枠の転用計画や後続工程に波及します。
ただし推定値であるため、試験を完全に置き換えるものではありません。判断材料を早く得るための仕組みとして位置づけてください。
現場特有の制約
| 制約 | 内容 | 対処 |
|---|---|---|
| 通信 | 地下・鉄骨内で電波が届かない | 現場内に中継、または蓄積型 |
| 電源 | 仮設電源が近くにない | 電池駆動、太陽光 |
| 移設 | 工事の進行で設置場所が変わる | 移設が容易な取り付け方式 |
| 損傷 | 重機・資材との接触 | 保護、設置位置の検討 |
| 撤去 | 竣工時に回収が必要 | レンタル、回収手順の明確化 |
このうち電源が最も現実的な制約になることが多くあります。電池駆動の機器は測定間隔を長くすることで寿命が延びるため、「どの頻度で測れば判断できるか」を先に決めると機器選定が絞れます。
工期による適用判断
| 工期 | 設置・撤去の負荷 | 適用の考え方 |
|---|---|---|
| 〜3か月 | 相対的に大きい | 判断が明確な用途のみ(養生など) |
| 3か月〜1年 | 中 | 変位監視、位置管理も検討可 |
| 1年〜 | 相対的に小さい | 複数用途をまとめて構築 |
短期工事では、機器の設置・校正・撤去にかかる工数が効果を上回ることがあります。レンタル形態や、設置が数分で済む機器を選ぶことで成立範囲が広がります。
データを判断につなげる運用
計測しても判断が変わらなければ意味がありません。運用として決めておく項目です。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 閾値 | どの値を超えたら何をするか |
| 通知先 | 誰に、どの手段で伝わるか |
| 確認の手順 | 通知を受けた人が何を確認するか |
| 記録 | 判断の根拠として何を残すか |
| 誤報時の扱い | 機器異常と実際の変化の切り分け方 |
閾値と通知先が決まっていない計測は、ダッシュボードが増えるだけです。誰の判断を早めるための計測なのかを、機器を選ぶ前に決めてください。
進め方
| 時期 | 取り組み | 到達点 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 判断したい事項の洗い出し、計測対象の決定 | 用途の確定 |
| 2か月目 | 現場の通信・電源の実測、機器選定 | 制約への適合 |
| 3〜4か月目 | 1現場での試行、閾値と通知の運用 | 判断への接続 |
| 5〜6か月目 | 効果の検証、対象現場の拡大 | 横展開の判断 |
まとめ
現場のIoTは、判断とセットで計測対象を決めることが成否を分けます。「測れるから測る」で始めると、使われないデータとダッシュボードが増えます。
効果が明確なのはコンクリート養生と変位監視です。通信と電源の制約を先に実測し、工期に見合う設置負荷かを確認したうえで導入してください。
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参考
- 国土交通省「i-Construction」https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html
- 国土交通省「建設施工・建設機械」https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/index.html
よくある質問
- Q. 建設現場でIoTを使うと何ができますか?
- コンクリートの温度から強度発現を推定して脱型時期を判断する、土留めや法面の変位を常時監視する、重機や資機材の位置を把握する、といった用途が実務で使われています。共通するのは、人が定期的に見に行っていた計測を自動化し、判断のタイミングを早める点です。
- Q. 通信環境が悪い現場でも使えますか?
- 用途によります。常時監視が必要な変位計測では通信が前提になりますが、コンクリート温度のように一定間隔で取得できればよい計測は、現場内に蓄積して定期的に回収する構成でも成立します。まず現場の電波状況を測り、それに合う方式を選んでください。
- Q. 短期の工事でも導入する価値はありますか?
- 設置・撤去の手間と効果を比較してください。数か月の工期では、機器の設置・撤去・校正にかかる工数が効果を上回ることがあります。一方、コンクリート養生のように工期が短くても判断が明確に変わる用途では、短期でも価値があります。
- Q. 費用の目安は?
- センサー単体は数万円から、通信を含むシステムとしては現場あたり月額数万円規模が一つの目安です。ただし設置工事、電源確保、撤去費用を含めた総額で比較する必要があります。レンタル形態のサービスも増えており、短期工事ではそちらが有利になります。
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